FACULTIES

英米学科ゼミ紹介

英米学科ゼミ紹介

英米学科

ゼミ紹介

神本 忠光 ゼミ(英語教育学)
神本 忠光 ゼミ(英語教育学)

 今年度のゼミのテーマは、英語学習者の学習方略についてである。4技能のいろいろな学び方について理論的なことだけでなく、実際に試し、英語力をいっそう伸ばすことも目的としている。ここでは、帯活動的に行っている話す能力を伸ばす方法を紹介する。

 学生の話す英語を観察していて、改善すべき点が少なくとも二つある。まずは、流暢さに欠ける。発話に時間がかかり、沈黙が目立つ。二つ目は、長く話せない。会話だと一言二言短めに時折発言するだけで、自分の「発言権」(floor)を易々と相手に渡してしまう。英語圏では基本的に、沈黙は金ではない。

 これらの欠点を持つ学習者を訓練する方法として、Maurice(1983)の4/3/2technique が参考になる。その基本は、同じ内容を違う相手に独白形式で繰り返す方法である。ただし繰り返すたびに、話す時間は4分→3分→2分と減っていく。1回目はその場で与えられた話題について話すので、言い淀み電文調になり、つなぎ言葉(filler)さえなく沈黙も多い。しかし、2回目以降は短期記憶にwhatとhowが貯蔵されているので、取り出しやすくなっている。その結果、時間が短くなっても前の内容を話し終えられる。話し手は同じ内容を繰り返せば良いのだから徐々に流暢になり、沈黙が少なくなる。3回話したら、話し手と聞き手の役割を交代させる。

 ゼミではこの基本形に2点修正を加えている。一つ目は、話す時間は全体的に長いので、すべて半分の2/1.5/1分に変えた。二つ目の修正点は「やり取り」を追加したことである。話し終えたら、質疑応答の時間を設ける。聞き手にはしっかり聞かせることになり、話し手も次に話す際に内容を発展させる接ぎ穂を入手できる。話す話題も日本語で既に知っている話題を選択すると、話しやすくなる。このような機会を定期的に設けることで、考えながら英語を話す過程に慣れ流暢さを獲得できる。話す能力は話させないことには伸びない。

GAZETTE 第15号(令和元年9月発行)より

佐藤 勇治 ゼミ(異文化理解/スピーチコミュニケーション)
佐藤 勇治 ゼミ(異文化理解/スピーチコミュニケーション)

 このゼミでは、異文化世界(人・社会・自然環境・歴史・文化)を総合的に理解できるように、マクロ的視点とミクロ的視点の双方から見る目を養うことを目的としています。マクロ的視点とは一つの国家や地域の骨格的基盤を構成する要素のことで、例えば、政治思想と制度、経済思想と制度、教育思想と制度、宗教と世界観・価値観、自然環境のようなものです。ミクロ的視点とは一つの国家や地域のマクロ的枠組みの中で生起する身近な社会文化現象のことで、例えば、国旗と国歌の意味、祝祭日の種類と意味、ことわざに見られる価値観、名前の違いに見る文化と宗教などを指します。

 このマクロ的視点とミクロ的視点の双方の視点で、これから関わる異文化世界のことをより総合的に理解できるようになるための方法論的修練の場として、この専門演習を提供します。具体的には世界の諸地域と国々から受講生の関心に応じて選択したものについて調査し、授業中に発表をしてもらい、それを基に教師を含む参加者で質疑応答を行うことで理解を深めていきます。

ジョセフ・トウメイ ゼミ(認知言語学)
ジョセフ・トウメイ ゼミ(認知言語学)

This seminar will focus on the Marvel universe. In November 1961, Stan Lee began publishing superhero comics that focussed on characterization and adult issues to a greater extent than most superhero comics before them. This approach, called "superheroes in the real world" proved to be a great success. From these humble beginnings, the Marvel brand has become a worldwide cultural phenomenon, encompassing film, television and many other forms of cultural entertainment, with the final movie in the Marvel Avengers series, Avengers: Endgame, taking in almost 2.8 billion dollars and 8 other films based on Marvel characters in the top 30 for a total of 12.5 billion dollars. In this seminar, students will be asked to purchase as their textbook a 1 year subscription to Marvel Unlimited, which includes access to over 28,000 digital comics. Students will then be encouraged to research topics related to the Marvel universe and Marvel characters.

堀 正広 ゼミ(英語学/文体論/コーパス言語学)
堀 正広 ゼミ(英語学/文体論/コーパス言語学)

 この演習では、英語で書かれた様々なテキストの言語特徴に焦点をあて、英語がどのように使われているかを明らかにしていきます。具体的には、「新聞英語のスタイル」、「英語スピーチのスタイル」、「英語小説のスタイル」、「広告英語のスタイル」、「日本語の俳句や小説を英語に翻訳する際に伴う問題点」、そして「男性と女性のコミュニケーションのスタイルの違い」などを扱っていきます。このようにして、それぞれの英語の特徴を明らかにすることで、新聞英語のルールやスピーチの構成・レトリックを習得するだけでなく、新聞社における報道の仕方の違いやスピーチを通して見られるスピーカーの考え方や個性を探ります。また、文学の英語を分析することで文学をより深く理解し鑑賞し、その作家のスタイルを明らかにします。日本文化の英訳に伴う問題点を明らかにすることによって、英語と日本語の違いを知り、英作文に活かすことができます。このように英語の多様性を分析的に学ぶことによって、客観的な理解力に基づいた英語力も養うことができます。

 授業では、小論文を作成する際の基本的な構成や表現方法も学んでいきます。学生は、教員のアドバイスを参考にしながら、関心を持ったテーマについて小論文を作成していきます。

向井 久美子 ゼミ(アメリカ文学)
向井 久美子 ゼミ(アメリカ文学)
ゼミにおける能動的学習の実践

 例年本ゼミでは、アメリカ文学や文化(特に芸術や映画)に関連した原作とその映像化作品を比較分析したり、詳しく解釈して議論しながら、小論文を完成させていくことを目標としています。今年は小説も映画も、時代の流れに沿って、LGBTQ や、民族や個人など様々な意味でダイバーシティを主にテーマとしている作品などを扱っています。どの作品に関しても、それぞれ意見を出し合い、議論も活発に行われ、小論文にもプレゼンにも、皆真剣に取り組んでいます。

 授業内容以外でゼミの様子をお話すると、学生たちは、ようやくコロナとの共存に慣れつつあり、その中で積極的に留学や就活について考え、活動を再開し始めてきています。特に今年のゼミ生は意識が高く、方向性が一致しているので、授業の合間に、そういう気持ちに応えられる機会を設けました。これまでも、こういう機会は何度も設けてきましたが、特にコロナ禍ということもあるのでしょうか、本当に学生たちは熱心に多方面に意欲的になってきています。

 まず、スターバックスコーヒージャパン(株)に内定を受けた石川沙紀さんは、もともとはエアライン系が希望でCA になる夢をもって英米学科に来てくれたのですが、コロナによって大手の航空会社の採用がゼロとなり、完全に気持ちを切り替え、外資系の英語を使用する企業を考えるようになったそうです。入学当初から英会話やTOEIC の勉強も熱心に行い、現在も900点をめざして勉強中です。そのような中で、真剣に就活に取り組みながら、今回の内定に至ったそうです。こういった決意や経緯を含めて、ゼミの後輩にいろいろと話してくれました。就活の体験や注意点や反省点など、リアルで具体的な先輩のアドバイスに、3年生からも熱心な質問が寄せられ、非常に活発な質疑応答が行われました。特に自己分析の方法やそこに含めるべき具体的な例やエピソードトークの作り方、企 業のオンライン情報を分析する際に注意するべき点、企業研究する際の軸となるもの、就活で心配な点、内定が取れずに落ち込んだ時のストレス解消法など、かなり踏み込んだ質問にも、自分の言葉で一つ一つ丁寧に答えてくれていました。

 もう一人、同じ4年の卒論ゼミで日本銀行熊本支店に内定を受けた重永歩美さんは、主として公務員をめざして、普段の授業もコツコツとまじめに着実に勉強していました。現在、本学の就職課には、全学的に学生の就職支援の一つとして行っているGSA 学生就職アドバイザーという制度があり、これは、内定をした学生が3年生にさまざまなアドバイスをする活動を「塾」形式で主催していますが、そのメンバーの一人としても、活動をしています。本人は、熊本に根差した安定した、一生続けられる仕事という軸で、公務員や銀行などを主として考え、自己分析を重視しながら、面接の勉強も続けていたそうです。もともと経済にも興味があり、携帯にアプリを入れて経済新聞を読んで知識を増やしたり、中学の頃に始めたジュニアヘルパーというボランティアを今でも続けながら、各企業のインターンシップや説明会などに積極的に参加していました。就職試験の面接では、究極的に人間性を問われる内容であったことや、ゼミの内容も詳しく聞かれて驚いたエピソードも話してくれました。ゼミ論で扱った映画作品を人事担当の面接委員も試験当日までに見てくれていて、面接ではその映画の話で盛り上がったそうです。その話を聞いて、ゼミ生たちも担当教員の私も、授業で扱う映画を改めできちんと学ばなければ、と身の引き締まる思いをしました。

 以上のように英米学科の3年生のゼミでは、このように対面で先輩の話を聞くチャンスもあり、それぞれの英語の専門分野の勉強と並行して、就活のモチベーションも高める経験もしながら、楽しく有意義に学んでいます。

GAZETTE 第23・24合併(令和3年11月発行)より


ゼミ現役生×教員
TA制度
Student’s Voice 楽しく学ぶことが理解を深めるポイント

園田 かな子

英米学科4年熊本県/宇土高等学校出身

隣家にALT(外国語指導助手)の先生がお住まいで、幼少期から外国人と触れ合う機会が多く、自然と英語に興味を持ち本学科に進学しました。3年次にはカナダへ留学し、さらに異文化の魅力に引き込まれました。本ゼミは、小説や映画を通して、アメリカの文化に流れる歴史や社会背景について学びます。細やかな視点から考察を深め、議論していきたいです。

Professor’s Voice 小説や映画に隠れたアメリカ文化を紐解く楽しさを

向井 久美子教授

英米学科教授

アメリカの代表的な小説や映画を見て、アメリカの社会、⽂化、芸術、宗教、国民性などを多角的に理解していきます。他国との違いを比較しながら疑問点を議論することで、普段は気に留めず見過ごしてしまうような何気ない事柄にも、意外な面白さや深い意味があることに気づくことができます。言葉の裏に潜む背景を理解し、物事を正しくフェアに見極めることができる判断力を身につけ、個性を発揮してほしいです。

大学案内2021(令和2年5月発行)より

米岡 ジュリ ゼミ(World Englishes)
米岡 ジュリ ゼミ(World Englishes)
My Seminar in World Englishes(世界諸英語)

Four-fifths of the world's English speakers are not native speakers of English. In such a world, is it possible to communicate truly with knowledge of the American language and culture alone?

My seminar in World Englishes studies the varieties of English used around the world, not only in native speaking countries such as Canada, England, Great Britain and New Zealand, but also in countries where it is used as a second language, such as Singapore, India and the Philippines, and as an international language as in China, France, Tanzania and most other places in the world. We discuss both their linguistic characteristics (accent, vocabulary and grammar) and their histories, cultures, and stereotypes, as they are inseparable. English education practices and usage are also reviewed.

As a basis, we begin with Japanese English as a variety. How is typical Japanese English pronunciation different from standard US or British English? Where does Japanese gairaigo come from and how has it changed in meaning? How is English used in Japanese cultural products such as J-pop, manga or Degawa English, or on Japanese signage? How is English taught in Japan? All of these questions provide a rich source of interesting topics for research papers and discussion in English.

In non-Covid times, exchange students from various countries (the US, Canada, Australia, China, South Korea, Germany, etc.) also participate in the seminar. We also usually take a seminar trip to Korea to observe how English is used in Korean signage, learn about Japan-Korea relations through English,and eat some delicious Korean food!

GAZETTE 第23・24合併(令和3年11月発行)より


ゼミ現役生×教員
川本 竣也
世界の英語が学べる。
話す機会が多いのも魅力

杉山 玲奈

英米学科4年熊本県/八代高等学校出身

米岡ゼミは、さまざまな国で話されている英語の特徴を学ぶので、高校時代から英語にハマった私にピッタリです。発音やつづりの他にも、使う場面でも違いがあるなど、新たな発見の連続です。研究したのは、韓国ドラマの中で話される英語です。ゼミ旅行で韓国に行ったのも楽しい思い出です。普段から留学生と会話したり、英語のみで進行する授業があったりと、着実に力がつきます。

川本 竣也
各国で異なる使い方をする英語。
「日本英語」に自信を!

米岡 ジュリ

英米学科教授

英語はそれぞれの国で異なる使われ方をしています。母国語だったり第2言語として使ったり、役割はさまざま。そこで、発音や勉強の仕方、喋り方、文法など、幅広い分類で各国の違いを研究し、世界20ヵ国を旅するように学んでいます。なかでも日本英語に自信をつけて、「使える英語」にすることが目標。また本ゼミでは留学生を多く受け入れていて、各国の英語の違いを共有し、相互理解を深めています。

大学案内2020(令和元年5月発行)より

デイビッド・オストマン ゼミ(英語教育/異文化理解力/異文化コミュニケーション論)
デイビッド・オストマン ゼミ(英語教育/異文化理解力/異文化コミュニケーション論)

 仮に自分が様々な国から集まった人々とプロジェクトに参加すると想像してください。文化的背景が異なるのでメンバー一人一人の考え方とコミュニケーションスタイルも必然的に異なります。このプロジェクトを成功させるために異文化理解能力が必要となります。この能力は文化的知識とコミュニケーション能力だけではなく、自国の文化を理解した上で、相手と共感し相手の視点から考えることによって深く理解する能力です。

 グローバル社会において必要なのは、文化や言語の違いは当然のことですが、まずは、身近にいる年齢や性別が異なる人々と自分との立場を置き換え、その立場から物事を見て考え、理解することから始めます。異文化を理解する事ということは、外国人を含む多様な背景をもつ人々と共存する上でとても重要な要素であり、これからの社会で活躍するために、必要不可欠であると考えています。

 その手段として、説話文学(伝記・自伝・短編小説等)を利用します。ストーリーは様々な世代や生活環境、そして文化的背景から書かれたもので、共感能力(視点転換能力)を生かしながら、他者の心情と状況を深く考察します。本演習ではストーリーを読み、登場人物の文化や状況を分析し、理解を深めます。グループ・ディスカッションで個人的発見や意見、情報などを発表し、最終的にそれを熟考した上でゼミ論文を仕上げることを目指します。

 本演習の目標としては異文化的知識や理解を深めることとストーリーの登場人物の視点転換を取ることによって新しい世界観を得て、様々な立場から物事を考慮できるようになることです。多様な社会に積極的に参加して行く学生にとって、説話文学の研究を通して成熟した視点転換能力を築き、さらに社会貢献力を高めることも本演習の目的です。

GAZETTE 第22号(令和3年8月発行)より


ゼミ現役生×教員
TA制度
Student’s Voice 文章の裏に潜む意味を翻訳する力を養う

堀脇 瑚南

英米学科4年大分県/大分豊府高等学校出身

ネイティブスピーカーの英語に触れられるチャンスと考え、オストマンゼミを選択しました。英語で書かれた小説から、バックグラウンドや文化、宗教などを読み解いて、異文化について理解を深めていきます。また、英語で論文を作成する際は、アカデミックな英語を扱いますが、先生の丁寧な指導のおかげで理解を深めながら進めることができました。先生がエネルギッシュで講義が楽しいところも魅力です。

Professor’s Voice グローバル社会で必要な“ 他者を理解し共感できる”能力を

デイビッド・オストマン准教授

英米学科准教授

グローバル社会において、文化や言葉の違いは当然のこと。多様な人たちと共存するうえで、異文化を理解することは欠かせません。熊本では、他国の人々と接する機会が少ないため、小説や伝記などの説話文学で他者の心情と状況を考察することで、視点を変えて理解する能力(共感能力)を身につけていきます。さまざまな人と協力し、多くの目標を成し遂げるために必要な能力を、ゼミで学びましょう。

大学案内2023(令和4年5月発行)より

坂田 直樹 ゼミ(英語教育/心理言語学)
坂田 直樹 ゼミ(英語教育/心理言語学)

 自分の頭の中に、どのように「ことば」が入っているか、想像したことはありますか。使う言語が英語であったとしても、日本語であったとしても、相手の言ったことに上手に応対できるのは、頭の中に言語の情報が詰まっているからだと言えます。英語を話せる日本語話者の多くは、母語の日本語と学習した英語を話すバイリンガルです。頭の中には、しっかりとした日本語の基盤があって、その上に英語の情報が入っていると考えられます。英語母語話者とは、頭の中の言語情報は異なりそうです。

 私のゼミでは、PsychoPyという心理実験ソフトウェアを使いながら、言語項目の提示に対する反応時間を測定することで、日本語母語の英語学習者における心の中の言語(日本語・英語)情報を明らかにし、英語母語話者とどこが異なるのか、また、どのように工夫すれば、より英語を上手に使えるかを具体的に考えていきます。例えば、英語と日本語では語順が異なりますが、英語で話すとき、これは不利になるのでしょうか。やはり、日本語の語順で英語の単語が心に浮かんでしまうのでしょうか。2021年度から始まった私のゼミですが、これまでの研究テーマは、「カタカナ語(意味ずれ型)は英語学習に影響を与えるのか」「TOEICの点数と発音の関係性実験」「TOEICのレベル、英語学習時間の違いによる英単語におけるストレス位置知覚の相違」「品詞が変わるときに語形も変化する英単語と、品詞が変わるときに語形は変化しない英単語の処理の際にシフト・コストが発生するのか」「日本人にとっての英語のカタカナ表記についての再考」「動詞の多義語の理解は英語力に差はあるのか」「洋楽を聴く頻度は英単語発音識別に影響があるのか」「学習状況における言語翻訳の違い」などです。自分が英語学習において、疑問に思っているポイントを、データを集めながら探って行っているようです。

矢冨 弘 ゼミ(英語史/社会言語学)
矢冨 弘 ゼミ(英語史/社会言語学)
ゼミにおける能動的学習の実践

 私の担当するゼミでは英語学、特に英語史と社会言語学に関する研究を行っている。現在は3年生が12名、4年生が9名在籍しており、学生は各自で決定したテーマについて研究を進めている。いくつかテーマを紹介すると「英語におけるkawaii の借用とその歴史に関する考察」、「動物由来の形容詞(piggy,doggy, foxy)の語源と用法」、「イギリス英語におけるDo you have~? とHave you got~? の使用と歴史」、「英語歌詞に現れるShe don’t~ について」などがある。

 私の座右の銘の一つはFrancis Bacon(1561-1626)の以下の一節である。Reading maketh a full man,conference a ready man;and writing an exact man.「読書は心豊かな人を作り、会話は機転のきく人を作り、書くことは正確な人を作る」。私がゼミの指導で重要視しているのは、この言葉にあるように、能動的思考と知識のアウトプットである。授業での議論やプレゼンテーション、論文執筆を通してこれらの能力を培うことを目指している。

 研究は簡単に言うと3つのプロセスからなる。①テーマ(問題)を設定し、問題解決への筋道を立てる。②調査をして説得力のあるデータを集める。③発見や議論を他人に伝える。テーマを決定する際には、普段は気にも留めないことを疑い、「なぜ?」という疑問を持つことが必要である。解決までの道筋を立てるためには、自分の考えをまとめ、他人の視点を総合して考える必要があるため、マインドマッピングやブレインストーミングといったグループワークを用いる。議論のベースとなるデータの収集は、電子コーパスやOxford English Dictionary といった専門的な辞書や文法書を使用することが多い。最終的に自分の議論をプレゼンテーションや卒業論文といった形で他人に伝えるが、これがなかなか思った通りにいかない。自分の発表を客観的に観察する訓練が必要で、学生にとっては大きな壁であるが、ここで試行錯誤を繰り返すことが大きな成長につながる。

 3年生の最初はたどたどしかった発表も、最終的には別人かと思うほどこなれたものになっていく。このような成長を目の当たりにしたとき、教育に携われて良かったと思う。現代にはあらゆる事柄に対して、様々な情報や意見が氾濫している。多様性を認めることは大事であるが、同時に能動的な思考能力をベースとして、自分の意見をしっかりと持つことが、この状況に振り回されないために必須だと考えている。

GAZETTE 第23・24合併(令和3年11月発行)より


ゼミ現役生×教員
TA制度
Student’s Voice イギリス英語の発音を研究。大好きな英語をさらに深めたい

野北 昂希

英米学科4年福岡県/ひびき高等学校出身

英語が好きで、もっと専門的に学びたいと本学科へ。英語発祥の地である英国に強く興味があり、イギリス英語の発音の特徴やその魅力について研究しています。また、時代によって言葉の意味や発音がどう変化していったかを知るため、英語史に関する書籍を読んで、ゼミ内で意見交換を行います。授業中は笑顔が絶えずフランクな雰囲気で、日々の学習の疑問など、何でも相談できる頼れる先生です。

Professor’s Voice さまざまな角度から英語に向き合い「なぜ?」を解決する能力を養う

矢冨 弘講師

英米学科准教授

英語の歴史的変化を扱う「英語史」が専門です。言葉は常に変化していますが、「なぜその変化が起こったのか」について研究していく学問です。ゼミでは知識のインプットはもちろん、発表や論文執筆などを通してさまざまな形の「知識のアウトプット」を重ね、専門分野への理解を深めると同時に「伝える技術」を磨きます。これからどんな人生を歩もうとも、臆せず主張できる力は必ずいきてくると思います。

大学案内2022(令和3年5月発行)より